ロワールワインセミナー

Seminaire - Degustation des 9 vins de val de Loire - dirige par
M.Yoichi SATO,le meilleur sommelier du Japon 2005

2006年7月20日(木)13:00-15:00
グランキューブ大阪国際会議場
講師:佐藤陽一

SOPEXA、INTERLOIRE(ロワールワイン委員会)、JSAによる、ロワールワインセミナー。お目当ては、第4回全日本最優秀ソムリエコンクールの優勝者(2007年の世界大会日本代表)である佐藤陽一さん。メディア上ではしょっちゅう拝見しているけれど、マクシヴァンには行ったことないので、生・佐藤さんは初めて・・・、で、どんな講義&試飲説明をされるのか、とっても楽しみにして行きました。

(壇上には、INTERLOIRE副会長ジャック・クーリー氏(Couly Dutheil/Chinon生産者)もいらっしゃったけれど、それは、おまけで(?)。)

はたしてロワールには川カマスはまだいるのか、ロワール人はアスパラガスばかり食べているのか?ということも聞きながら・・・と、チラッとジャック・クーリー氏を見やってから、数少ない品種があの広いAOCに、テロワールそれぞれに応じて存在しているロワールの特徴をどう捉えていくかが課題・・・と佐藤氏。ロワールについての基礎知識は皆さんご存知との前提で、どこまで深い話が出来るか試みたいと、早口の講義が始まりました。

ミュスカデ2種(リストの1と2):
色味は、緑がかったライムグリーン、もしくは、黄色がかったレモングリーン。
ミュスカデは香りが取りにくいため、まず口に含み、2、3秒で吐き出して、余韻の部分をしっかり覚えることが重要。ミネラル、石灰、果物の熟し具合などを見ていくのだが、それよりも、
1) |------アタック------>|--余韻-->|
2) |--アタック-->|------余韻------>|

このような、口の中でどのような時間的展開があるかを、お客様にお勧めするきっかけとしたい。(1)は緑がかった色合い通りの、キリキリした展開。一方(2)はむしろ後半が強く、なめらかさの中に苦味がある。どこの店でも「夏にぴったりな酸味。冷やして、白身魚に塩味で、すだちをきかして。」だと面白くない。また、“Sur Lie=イースト香”というのも、最近はテクニックが進歩しているため、自分は感じない。アミノ酸が溶け出した香りというのもないと思っている。ボルドーブルゴーニュのような「自己完結型」ワインではなく、何かパートナー(シチュエーションや、味)がいるワインだから、「なんだ、ミュスカデか」で終わらない出し方が工夫できるはず。マリアージュ例は、(1)ミネラルの味わいが広がるタイプ・・・「白」に色味を補うという意味合いで有機栽培のトマトに塩をきかせてetc.、(2)後味が磯っぽい・・・海草、昆布、のりなどをきかした料理 など、いかがでしょうか?

ブラインドで、ミュスカデとアリゴテで迷ったら、舌の根っこにあててみる。吐き出した後で、スーーッとするのが「リンゴ酸」。ブルゴーニュの場合、大抵マロラクティック発酵で酸が変わっているので、ヨーグルトの苦味ような「乳酸」を感じる。

サンセール(3):
博多ネギ or シブレット、ライム皮、氷水につけたアスパラの皮を下手に剥いた時のような香り・・・。温度が上がってくる内に、酸味から苦味に味わいがシフトしてくる。

ロゼ2種(4と5):
注いですぐは5円玉のような金属的ニュアンスがあるが、ぐるぐるグラスを5〜6分も回す内に消えて、赤い果物のフルーツバスケットの香りに。ロゼを出して「ふ〜ん、甘い。後、苦い。」とお客様に言わせるのでなく、味わいが「まとまったもの」として出したい。果実味・酸味・甘味のバランスをとる、「状態を起こす」ために、抜栓後にもう一度コルクをしてガシャガシャ振り、白く泡立った泡が消えたらサーヴする、ということを店ではやっている。(もちろん、バックヤードで。)味わいでは、円を想定して、その面積の広がりで捉えたい。(4)酸が優しく広がってさくらんぼの印象。まとまった小粒な果実感で、「小さな丸い円」を思わせる。軽いアペリティフとして、氷を入れて 等。(5)4に比べ、余韻が伸びる様を、「円が広がっていく」と考える。その広がりの部分に「皮を想起させる渋みが現れる」。エスニックや中華に。また、乾いた感じもあるので、炭火焼の肉のロゼ色に合わせる 等。
ロゼも、2つ同時にサーヴして交互に飲んでもらうというのも、楽しい。ロゼの違いを店側がしっかり体感するために、まずは12本くらいは取って全部飲み比べたい。ワインとは、麓に向かっていろんな方向の小道がたくさん伸びている丘のテッペンのようなもの。お出しする時も、「さくらんぼの種の苦味があって、その後で甘味がしますよ」と、お客さんが下りていく道筋に向かって背中を押すべし。

カベルネ・フラン(6と7):
カベルネ・フランは色素量が多く、酸化に強い。デキャンタージュした方がいい。若い場合、グラスが大きいと苦味が出てしまうため、小ぶりで丸みのあるグラスだと良さが現れると思っている。「野菜に合わせられる赤」という点も、非常に興味深い。
比較試飲するのは、2004年と2005年の、条件が大きく異なるヴィンテージ。2004年は一般的気候。2005年は熱かったため、よりスパイスがきいて、黒い果物の印象が強い。両方とも色調は紫色(特に6)。(6)赤い花、赤い果実をすりつぶしたような。凝縮感。少し「墨」のニュアンス。スイカズラ(vegetalは生産者が嫌がることがあるので、特徴としての青味を表現する時に)。(7)穏やかな滑らかさ。口に含むと、まず苦味、次に赤い果物の酸を表現、最後に漢方薬、エピス、木の皮や根っこ、少し乾いたもの。

カベルネ・フランというと、一般的に、アスペルジュ・ヴェールのような緑色のニュアンスが言われるが、これは品種の問題?それとも産地が北だからでしょうか?」という佐藤氏の質問に対し、ジャック・クーリー氏は次のように答えた。「カベルネ・フランは、ここ5年ほどで収穫期が変わり、より熟してから収穫するようになりました。というのも、10年前に、「熟した状態」が私たちが思っていたものと違っていることが判明したからなのです。例えば、「食べてみてすごく甘い」ことを指標にしていたわけですが、実はそこからまだ3〜4日は待たないと「完熟」にはならなかったのです。このことが分かってから、より頻繁に畑に足を運び、より多くのぶどうを食べることが重要となりました。皮がスルッと剥けるか、種を噛んだ時に緑の感じがないか・・・などをポイントにしています。」Couly Dutheilでは、2003年より上記のような収穫期の後倒しを実践しているとのこと。

もう一つ、佐藤氏が投げかけた質問は「ブラインドで、シノン、ブルグイユ、サン・ニコラ等を試飲した場合、あなた方生産者には、分かりますか?」というもの。クーリー氏も、シノンについて、土壌的に3種類(石ころ、斜面の石灰層、プラトーの粘土石灰層)あって、それぞれ特徴があると説明したばかりだけど・・・と言いながら、同じ品種、狭い範囲の中で、実際難しいと思う・・・との答えだった。50年前と違って、今は最先端の同技術を使っているため、AOC<生産者で考えた方がよい場合も多い。

佐藤氏によると、70年代、80年代の熟成したカベルネ・フランのAOC違いはおもしろいとのこと。

  • シノン・・・色調に赤みが出て、いい意味での鉄っぽい熟成感
  • ブルグイユ・・・色調の紫色を失わず、スミレ、黒い果実を砕いた感じもそのまま。
  • ソーミュール・・・軽快感を増してくる。

若い場合は違いが分かりにくいが、熟成に目を転じると、ロワールをより多くオンリストする可能性も出てくる。


<試飲ワイン>

  1. Sautejeau Marcel "Château de l'Hyvernière"
    Muscadet Sèvre & Maine sur Lie 2005
  2. Gfa Les Rouges Terres "Château de la Mouchetière"
    Muscadet Sèvre & Maine sur Lie 2005
  3. Jean-Max Roger
    Sancerre Blanc "Les Caillottes" 2005
  4. Domaine des Grandes Vignes
    Rosé d'Anjou 2005
  5. LaCheteau(Les Grands Chais de France)
    "Soupçon de fruit" Cabernet d'Anjou 2005
  6. Château de Passavant
    Anjou Rouge 2005
  7. Couly Dutheil
    Chinon Rouge "Les Gravières" 2004
  8. Benoît Gautier
    Vouvray Effervescent Méthode Traditionnelle Brut de Gautier
  9. Paul Buisse
    Crémant de Loire

Sautejeau Marcel SA (ネゴシアン)

Founded in 1922 by Auguste Sautejeau the company has managed to preserve its family character and has one of the most modern vinification centres in the Loire Valley using state of the art technology to ensure consistent quality wines are produced under optimum hygienic conditions.

Domaine des Grandes Vignes
http://www.domainelesgrandesvignes.com/

Les Grands Chais de France(ネゴシアン)

LaCheteau
http://www.lacheteau.fr/

Château de Passavant
http://www.passavant.net/

Couly Dutheil
http://www.coulydutheil-chinon.com/
フルーティさ、ナチュラルな果実香を残すため、木樽での樽熟を行わない。

Benoît Gautier
http://www.vouvraygautier.com/