8月の本
エッセイ・評論・ノンフィクション:
- 冷血(トルーマン・カポーティ、新潮文庫)
・・・今年のアカデミー賞でフィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞を取った映画「カポーティ」(「冷血」を書き上げるまでのカポーティを描いた伝記ドラマ)がそろそろ公開される。
抑制されたトーンで緻密に、しかし生々しく劇的に再構築される、一家惨殺事件の諸相。恐ろしい魅力を持った本。iki氏は何度も読み返しているとおっしゃっていた。納得。
- 詩の履歴書 〜「いのち」の詩学(新川和江、思潮社"詩の森文庫")
---自らの詩の歩みをつづったこのエッセイは、60年代初頭に発表された、傷ついたミューズの詩から始まっている。文明批評一辺倒になっていた当時の現代詩への違和感を唱え、そこで退けられた「愛」についても、「熟した豆がひとりでにはじけてこぼれるように」詩の言葉をつむぎたいと願った若き日の新川和江の気概が、その後どういう「うた」として結実するかも追える内容となっている。
- 黒雲の下で卵をあたためる(小池昌代、岩波書店)
---「図書」連載時から大好きだったエッセイ。纏めて読み返し、物事への眼差しの深さや言葉の選び方一つ一つの妙味を堪能しているうちに、小池昌代の独特のリズムがこちらの身体に乗り移ってくるようなところがあって、ちょっとした中毒に。タイトルは、ギュンター・グラスの詩から。
小説:
- わたしを離さないで(カズオ・イシグロ、早川書房)
---後半は、軽い吐き気を覚えながら、読み終わった。お腹の底に残るこの重〜い感じは、提供者(donor)の、手術され摘出される痛みを伴う静かな諦観に、カラダがシンクロしているせい?
- ブリキの太鼓 第1部(ギュンター・グラス、集英社文庫)
---自伝発刊を前に、ドイツの新聞のインタビューで、ナチスドイツの武装親衛隊に所属していた過去を明らかにし波紋を呼んでいるギュンター・グラスの出世作を今一度読み返そう。
熊谷徹さんのホームページにレポートあり。yeuxquiさん「仏語西都逍遥」"2006-08-17ギュンター・グラス事件"にも詳しい経緯が紹介されている。
漫画: