8月の本

エッセイ・評論・ノンフィクション:

  • 詩の履歴書 〜「いのち」の詩学新川和江思潮社"詩の森文庫")
    ---自らの詩の歩みをつづったこのエッセイは、60年代初頭に発表された、傷ついたミューズの詩から始まっている。文明批評一辺倒になっていた当時の現代詩への違和感を唱え、そこで退けられた「愛」についても、「熟した豆がひとりでにはじけてこぼれるように」詩の言葉をつむぎたいと願った若き日の新川和江の気概が、その後どういう「うた」として結実するかも追える内容となっている。
  • 黒雲の下で卵をあたためる(小池昌代岩波書店
    ---「図書」連載時から大好きだったエッセイ。纏めて読み返し、物事への眼差しの深さや言葉の選び方一つ一つの妙味を堪能しているうちに、小池昌代の独特のリズムがこちらの身体に乗り移ってくるようなところがあって、ちょっとした中毒に。タイトルは、ギュンター・グラスの詩から。

小説:

  • ミカ!(伊藤たかみ文藝春秋
    ---団地の床下に「オトツイ」を隠し持つ、小学六年生の双子たちの物語。「大人も楽しめる児童小説」という評価もあるけれど、そう感心はせず。
  • わたしを離さないで(カズオ・イシグロ早川書房
    ---後半は、軽い吐き気を覚えながら、読み終わった。お腹の底に残るこの重〜い感じは、提供者(donor)の、手術され摘出される痛みを伴う静かな諦観に、カラダがシンクロしているせい?
  • 感光生活(小池昌代筑摩書房
    ---フィクションとノンフィクションのハザマ、現実と異世界のハザマを揺らぐような、多様な私(=コイケマサヨ)を描く短編集。小池昌代、いいなぁ。ブーム到来。

漫画: