ロンドン 2005/4/28-5/7

15年ぶりのロンドン。前回も同じ季節だったけれど、ずっと曇り空が続いて、ロンドンというのは暗い街なんだなぁと感じたことを思い出す。

今回はうって変わって、約10日の滞在中、天気予報にこそ「嵐」とか「雷」とか恐ろしげな言葉が登場したけれど、風が強くて天気が変わりやすく、つまりは天気予報がなかなか当たらないというイギリスで、毎日、「今日も晴れみたい」と、嬉しい驚きでまずは空を眺めることから始まった。

居候させてもらったロンドン北西(ゾーン3)にあるN&Wの持ち家は、築200年ほどのレンガ造りの2階建て住宅が並ぶ、Nによれば「典型的な、ワーキングクラス住宅地」だそうだ。地下鉄の駅前には一応、近代建築のシネコンとか大型スーパーがあるけれど、その外は、小ぶりで似たような佇まいの古い家並みがパターン化された模様のように延々と続く。

駅前には、最近この辺りに居を構える人が増えつつあるという移民(特にアフリカ系)の姿が目立っていた。そういえば、ヒースロー空港で、機内と空港ビルをつなぐ通路を歩いて、到着後ほぼ初めて目にした現地のイギリス人は、数人でおしゃべりしていた空港職員で、全員多分インド系。不法労働者や移民問題のせいでずいぶん念入りにするため行列が進まない入国審査、ここでもアフリカ系やインド系の職員が多い。大阪に住んでいると、アフリカ系の人に出会うこと自体が少なく、それも、青がかったような深い黒い肌の人はほぼ目にすることがないので、頭の中の知識とは別に、眼前の彼らの容姿に違和感を感じる自分がいて、そういう自分の「田舎者視線」が街行くだけであぶりだされてしまうのが、少々ヒリヒリする体験。

そういえば、ローカル/国際の対比というか融合というか、空港からヒースロー・エキスプレスの駅に向かう途中で見かけた、香港上海銀行の広告には「the world's local bank」という企業コンセプトを、例えば一つのジェスチャーでも地域によっては別の意味になること等を使って、連貼ポスターでシンプルにビジュアル化していた。「イナゴ」がアメリカでは災害だけど、どこかの国(失念)では食べ物で、中国ではペットとか。

が、これを眺めている時、W氏に電話かけた公衆電話の下にどでかいスーツケースを置き忘れたことに気づき、あわてて到着ロビーに取りに戻った。到着したばかりで財布やパスポートに気を取られて緊張していたというのに、なんというボケっぷり…。衣類とお土産くらいしか入ってなかったのでなくなっても困らないけれど、「持ち主の分からない荷物があったら、係員に連絡するように」みたいな内容の爆弾警戒アナウンスがちょうど流れている中で、無防備にもスーツケースが置きっぱなしにされている風景はかなり間抜けで、ヒジョーに反省した。

パディントン駅で、ロスタイムはあったけれど無事Nっちに合流、2度ほど乗り換えてからゾーン3のおうちへ。お土産は日本酒3本(大吟醸2本、熟成酒1本)と明太子、筍と大根のお漬物。昨夜の残りものという、いかにもイギリス風のラム肉のロースト(W氏手作り)をスライスした横に、早速開封した日本的漬物を並べて酒盛りしながら、明日からの予定を相談。このラム肉が絶品で、N&W考案(?)によるミントソースとホースラディッシュソースと醤油をまぜたものをつけると、ほんといくらでもお腹に入った。