イワンのばか

「三人の隠者」(もともとヴォルガ地方の伝説らしい)のジイサマ3人に、たまげたー。この隠者達のでっかい存在感は、金庸の荒唐無稽な登場人物たちにも通じるものがあるなぁ。すっこーんと、おーきなモノに触れた感じが、とっても気持ちよい。

<お話の内容>
百姓が「神さまのような」と評した隠者達の話を聞いて、どうしても彼らに会いたくなった僧正は、船長から「まるでばか同然な老人が住んでいるだけで、なんにもわかりもしなければ、海の魚のように、何ひとつ話もできない」と止められるのは聞かずに、小船を孤島に寄せさせる。
百姓の言葉通り、その孤島の浜辺では、100歳超えた、お髭の長ーいジイサマたち3人が、手をつないで、じーっとしている。(このくだりなんか、想像すると、本当にカワイらしい。)服なんかもボロボロで、布っきれとかゴザみたいなものをまとってるきり。神さまへのお祈りの言葉を聞かれて、「あなたも三体、わしらも三人、わしらをお憐れみください」と答えたジイサマたちに、僧正は、うーん、それは、もしかして三位一体のことを言ってるつもりかもしれないけど、ちょっと違いますね、と正しいお祈りの言葉(天にまします我らの父よ、云々)を、ものすごくモノ覚えの悪いジイサマたちに終日丁寧に教えて、ジイサマたちに感謝されつつ島を後にする。
えーことしたなーと、ちょっと興奮気味に寝られないで、船尾でジイサマたちの島のある方角を眺めていた僧正は、月光の下、船の後を、何かきらきら白いものが追ってくるのに気づく。なんとそれは、手をつないだまま、海上をまるで陸の上のようにまっすぐ進んできたジイサマたちだった!曰く、「教えてもらったお祈り、唱えるのを1時間ほど休憩したら、全部忘れてしまった。もう一度教えてください!」
もちろん、僧正は深くお辞儀をして、私にはあなた方をお教えすることはできない、どうぞ、逆に私たちのために祈ってくださいと、ジイサマたちが(また、海上をアメンボみたいに)島に向かって帰って行くのを見送ったのだった。

===== トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇 =====

  • イワンのばかとそのふたりの兄弟
  • 小さい悪魔がパンきれのつぐないをした話
  • 人にはどれほどの土地がいるか
  • 鶏の卵ほどの穀物
  • 洗礼の子
  • 三人の隠者
  • 悔い改むる罪人
  • 作男エメリヤンとから太鼓
  • 三人の息子